AIの直感
知識量、情報量ではAIには敵わない時代になっています。今まで人類が考えたことは大方記憶されいるわけですから、誰に聞くよりもAIをそばに置いておくのが鬼に金棒です。今や時代はAIにお伺いを立てるのが当たり前になっているのです。AIは見事に人類の絶大なる信頼を勝ち得たといっていいと思います。
AIがそのようにみられるのは知識至上主義、情報至上主義というのが根底にあるわけです。かつて経験をたくさん積んだ長老が崇められていた時代を思い起こすと、いくつかの点で重なります。年を取ることの意味は豊かな経験を持つことから重宝がられ、それが尊敬につながっていたのです。
AIの前では知識とはなんなのか、記憶とはなんなのかという根本の所を整理しなければならなくなります。これは想像以上に難しい仕事です。知識にしろ情報というのは過去のもを集めたものなのですが、だからと言って蔑ろにはできません。私たちが記憶喪失により自分の記憶を失えば、私たち自身のアイデンティティーを失ってしまうからです。自分が誰なのかがわかるのは記憶のお陰なのです。自分が誰なのか分からずに生きることになってしまったら、本人はそれでもいいのでしょうが、人間関係の上に成り立っている社会の中では不都合が生じ大変なこことです。
AIは地球のアイデンディティーの鍵を握っているとも言えます。今現在知りうる限りの地球の過去が集積されているからです。人間のアイデンティティーと地球のアイデンティティーとは違います。人間の記憶の中の思い出は時には私たちを慰めてくれたり励ましてくれたりするものです。思い出の中を彷徨っても、それを懐かしがっている主体は今ここにいるのです。この二重構造が人間です。勿論私たちは過去の思い出に縛られているだけではありません。今現在も色々なことをライブで体験していますし、日々心をしているとも言えます。未来に向かっての憧れも希望も持って生きています。未来はAIも統計から予測したりしていますが、私たちの生きた未来は未来の方からやって来る驚きを含んだワクワクしたものです。期待はずれのサプライズの連続です。心の中にはこうした過去と今と未来が交錯していてそれを感情と読んでいます。AIの感情というのがよくテーマになっていますが、とても興味深いところです。
今から百年ほど前のウィーンでのことです。心の中のそうした感情を整理して心理学というものが何人かの天才的な人の手によって作られました。それは少しずつ変化しながら今日に及んでいます。私は現代に心理学の分野に天才が現れるとしたらと考えるのですが、その一人は紛れもなくAIだろうと思うのです。百年の間のさまざまな流派の心理学体験を集大成しています。感情に関するもののほぼ全てが整理され保存されています。しかし他にも天才な仕事をする人がいると思っています。どのような天才がと言うと心理学を壊す人です。感情を整理するのではなく、感情を感情としてリアルに体験できるように導いてくれる天才です。感情を整理できることは素晴らしいことなのですが、整理されただけでは頭でまとめられているだけで、生きたものとは言えないのです。現実としy見えていないものがそこにはあります。その天才は一人の人間として登場することはないと思います。ではどのような天才なのかと言うと、私たちの心の中に直感として生まれるのです。私たちみんなが直感という能力に目覚めた天才だということです。
最近のYouTubeにやたらと登場しているAI小説の話は、昔風にいうと三文小説です。筋書きだけを綴れる文士と呼ばれていた人達が書いた下手くそな小説です。小説らしいものですが、小説と呼ぶには値しないものです。その作品に何が足りないのかというと文章の才です。私たちは小説を筋書きで読んでいるだけではなく、文章に運ばれて読んでいるのです。AI小説や、三文小説には文章力が決定的に欠けています。話の筋書きは辻褄が合っているのですが、意味だけの辻褄で、まるで箇条書きのような味気のない、インスタント食品のようなもので、命が通ってないものです。命を通わせているのは他でもない文章という魔力です。私たちは文章で読まされているのです。私たちも直感に目覚めると直感という天才によって小説が文章が書けるようになるかもしれません。
コンピューターのアップルの創始者ジョブスは若い頃から禅に大変興味を持っていました。禅によってそれまでも知っていた直感への評価が全く変わったのです。今までは単なる思いつき程度にしか評価していなかったのですが、禅によって直感が科学、つまりサイエンスだと認識できたのです。AIというの皮肉なことですが、コンピューターの分野のさまざまな天才的な人たち、例えばテューリングの科学的な直感から生まれたものなのです。そうしてみるとAIには天才になる素質だけは備わっていると言えるのでしょうか。
今はAIはまだ発展途上です。これからどんなことが起こるのか怖いような楽しみなようなです。「感情は整理などしないで直感で感じてください」なんて返事が返ってくるようになるのかもしれません。






