蝉の声

2013年7月31日

ドイツでは40度を超える日が続く暑い夏でも蝉の声を聞くことは無く、ヨーロッパではピレネーの少し手前の南フランスでわずかに聞かれるらしいのですが、やはりピレネーを超えてスペインに行くか、アルプスを超えてイタリアに行くかしないと蝉の声を聞くことはありません。

久しぶりに蝉の声を聞いた時の懐かしさは今でも忘れられない思い出です。

 

七年とも九年とも言われる長い間土の中で生きて最後の二週間を蝉は空気中で過ごします。

ある夏訪ねた親戚のおばさんの家の庭に大きな木があり、その木のまわりに幾つも小さな穴があいているので尋ねると、蝉が出てきた穴だということでした。「猫が狙っているから、上手く出て行ってくれるといいといつも思っているのよ。よっぽどおいしいのね」と80歳になるおばあさまがお話しくださいました。その家に住んで40年になるそうで、毎年沢山の蝉が穴から出て行ったそうです。「この木はよっぽど蝉の好みに合っているのでしょうね」と私に幾つもの穴を見せながらお話しくださいました。

 

昔ファーブル昆虫記を読んでいて、蝉のところに面白い記述を読んだことがあります。

ローマ帝国が栄えていた当時のローマでは土から出てきたばかりの蝉が最高の御馳走だったそうです。ファーブル自身は「いまだ食べたことは無いのですが」と断りを入れていました。

 

そんなに長い間蝉は土の中で何をしているのかやはり気になります。さして大きな昆虫ではないので、一年も土の中に居れば充分な様に思うのですが、蝉には蝉の人生が、「蝉生」があるのでしょう。ゆっくり木の根っこから樹液吸って、更に土を知り尽くして熟成して出て来るのかもしれません。だからおいしいのでしょう。

そして無事に外に出て木に登って来て羽化してからは、オスの蝉は十日から二週間、昼の間はお腹にある弁の様なものを、恐るべきかな一秒間に二万回と言う速さで震わせて音を出し、隣の共鳴室で音を拡大して蝉の声になります。オスが鳴く目的は今風にいえば婚活こと御嫁さん探しです。その後の結婚生活は無くただ生殖のための結婚です。

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