篠田桃紅さんの細い筆

2019年1月20日

墨で抽象画の世界を描き続けられた今年106歳になられる篠田桃紅さんの使われる筆は筆先の太さは写経で使う筆ほどもなく加えて長さが少なくとも15センチはあろうという箒の柄のようなおよそ筆という常識からは逸脱していて初めてその筆を使ってお仕事をされている姿を動画で目にするまではどのようにして使われているのか、果たして本当にその筆から作品が生まれるのかは想像するのが難しいものでした。

その筆だけでなく太い筆も刷毛のようなものも使われ制作をされていますが印象的な筆はあの細長い筆先でそこにたっぶり含ませた墨から生まれる篠田さんの心の写しとご自身で仰る線はあの筆無くしては生まれることはないまさに琴線です。

自由であることが篠田さんを支えている思想的バックボーンだとインタビューから受け取りました。

書道、前衛書道から墨による抽象画へとスタイルを変えて今に至るのですが作品を作り続けている今も自由であることを追い求めているわけで日々新たな発見の中だとおっしゃいます。

自由であることのほかに謙虚であることを心がけていらっしゃいます。

謙虚は東洋の自我の現れの姿ですから西洋的の自己主張の自我とは正反対の位置にありますが宇宙と人間とを結び付ける篠田さんの謙虚なる自我は宇宙を呼吸し迷いを吹っ切りながら作品に結集します。

「墨は五彩」をとても力強く語っておられました。

東洋の数え方の中で五というのは五行からくるもので宇宙の全てということですから単に五色のことを言っているのではなく篠田さんご自身でも百彩、千彩にも成ると言っておられるように無限のニュワンスが黒の中に見える人には見えるものなのです。

 

篠田さんのお姿を拝見していて感じる一番は何かを貫かれた生き様でそこには強がりや力みのようなものがなく淡々と心と対話しながらそれを作品にし続けた人生が輝いていることです。

好きなことを一身にされ続けた篠田さんですがそもそもそれが天命だったというべきなのかそれとも作り続けたことで天命になったのかと考えながら一つのことを続けることの偉大さ、続けられることの幸せを篠田さんの生き様に感じています。

 

 

 

 

 

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