ドイツのクリスマスバザー
やはりこの時期になるとクリスマスバザーに行きたくなります。人で賑わう中を歩いて買い物をしてきました。
クリスマスの日まで続くクリスマスバザーの起源は古く、13世紀まで遡れるそうです。ただ当時は民衆が冬の食べ物を蓄えておくためというのが主な目的の市だったそうです。15世紀になって子どものおもちゃや家庭用品、そしてクリスマスツリーの飾り物などが屋台のような簡単な構えの店頭に並ぶようになったということです。バザーという名前もペルシャ語の市場という言葉ですから、イスラム系の文化の中で育った伝統なのですから、十字軍が持って帰ってきたものに違いありません。
今はどうなっているのかというと、バザーとは言うものの半分以上が飲食関係のお店となっています。そこで冬の名物飲料であるグリューワイン、赤ワインにシナモン、クローブといった香辛料を混ぜて温めたものを片手に軽食をしながら、親しい人たちが一年を語り合う出会いの場所となっています。キリスト教の待降節に並行して開かれるため四週間続きます。初日は一年振りということで賑わいますが、最初の頃は人影はまばらです。流石に最後の週は盛り上がりを見せ大変な人混みになって賑わっています。
私がドイツに来てからかれこれ五十年になるのですが、その間にも若干の変化が見られます。出店の作りなどはほぼ同じ様相を呈しています。そこで売られているものもほぼ同じです。クリスマスツリーに飾る、エールツ地方の特産である人形、特に天使をイメージした人形が楽器を持って演奏しているものが人気です。かつてはクリスマスの時期にしか手にはいらなかったものだったのですが、商業の波にまつわる営業感覚の変化で一年中売っている店ができたりしてしまって、かつてのようなクリスマスバザーでなければという魅力は薄らいでしまいました。
この人形作りは今はドイツとなっているエールツ地方で作られています。ここはかつての東ドイツのザクセン地方と当時のチェコのボヘミア地方の間に位置するところにあり、西と東に分かれていたドイツの四十年の間は、当時の西ドイツでは異国品でした。ベルリンの壁の崩壊を機に解放されたことで今までの生産力では販売に間に合わなくなり、人件費の安いアジアで作るようになります。ところが出来上がった人形の顔が、今までのドイツで作られていたものとどこか違うのです。絵付、特に顔に違いが如実で、売上が思ったほど伸びなかったという話を聞いたことがあります。人形の顔にはそれを書いた人がそのまま現れると言います。人形がアジア的な顔つきになってしまって、伝統のもつ雰囲気が感じられなくなったのでしよう、今はまた地元でドイツの職人によって絵付けがされているということです。
それでもくるみ割り人形の色々な種類はこの時期の風物詩であることには変わりがありません。口に咥えたパイプから煙を吐く羊飼いたちの姿は百年一日同じ雰囲気を醸し出してい、流行になったキャラクターが登場することがないのはドイツの頑固な気質を反映しているのでしょう。お店に入り、並んでいる人形たちの姿を見るとホッとするというのが老若男女を問わずドイツ人たちなのです。
最近では札幌が姉妹都市のミュンヘンからクリスマスバザーを招聘して、ドイツので売られているものが買えるそうです。






