弦をつまびきながら歌う。歌われつつけた叙事詩
2026年6月3日
叙事詩のことを指して言うリリック(lyric)という言葉は、古代ギリシャの弦楽器リラ(Lyre)に由来しているのですが、弦楽器を爪弾き詩人が歌うというスタイルは今日まで脈々と受け継がれてきているのではないかと考えると、歌と弦楽器は本当に長いお付き合いをしてきたのだと感動してしまいます。そもそもは当時の楽器リラの伴奏で詩人が心情を綴ったものを歌ったのですが、弦楽器で歌うという括りにすれば現代でもギターを片手に多くの人が歌う楽しみを味わっていると言えるようです。
シンガーソングライターのボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したことは記憶に新しいことですが、私は彼の歌詞は叙情詩として文学のジャンルの作品として評価されたと理解しています。英勇譚のような膨大な叙事詩は今日ほとんど書かれなくなっていますが、抒情詩は世代を超えてどころの話ではなく、歴史の中を三千年にも渡り歌い継がれたのです。弦楽器と抒情詩の組み合わせは、時代と民族を超えて引き継がれてきた普遍的な人間の営みだったということです。
ドイツの文豪ゲーテに晩年弟子のエッカーマンが「この先文学はどのようなものが書かれるるのでしようか」と聞いた時、ゲーテは「今まで書かれてきたのがこれからも書き続けられるですよ」と答えたと言います。これからどんな歌が歌われるようになるのかと考える時、ゲーテのその言葉は考える材料になります。確かに人類は三千年の間ひたすら弦楽器を片手に歌い続けてきたのですから、これからも同じように弦楽器をつまびきながら心の思いを歌い続けてゆくのでしょう。
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仲正雄ブログ






