母の最後

2022年3月1日

退院の日の早朝に母が亡くなったことはやはりショックでしたが、思い返すと、母が直腸を手術したことで人工肛門に切り替えられたため、その取り外しのために母のそばで実地の講習を受けることになり、全面的に厳しい面談禁止の措置が取られている病院で、例外的に母のもとにまで足を運ぶことができました。

手術後二週間した時に、病院側の計らいで、講習を受ける付き添いの形で、初めて母の元にゆくことができ対面できた時は、手術後の経過が驚くほど良好でとても元気だったので、簡単なことでしたが30分以上も話すことができました。その時撮った画像をドイツの家族にも送れました。

それが母との最後の幸せな時間でした。

それ以降母は、今思えばですが、少しがずつ変化していったように思います。特に最後の二十四日の訪問ではもう在りし日の姿とは違うのが気になりました。その時はまだ「きっと家に帰れば、住み慣れた環境の中でまた平生をとり戻す」ような気がしていたのですが、やはり無理だったようです。

母がそのことを一番知っていたのでしょう。これ以上もう人のお世話にはなるまいと、退院の日まで、私たちに希望の火を心に灯させ、でも、その日の早朝に一人で静かに逝ってしまいました。

 

母の存在を今はしみじみと噛みしめています。

 

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