三國シェフ、中卒礼賛

2021年3月2日

四谷にあるフレンチレストラン、「オテル・ドゥ・ミクニ」のシェフ三國清三さんが配信するYouTubeは今までの料理番組にない魅力があります。

オテルはフランス語はHを発音しないので、ホテルのことです。ただパリの街中にある豪邸をフランス人は「オテル」と言います。そこは宿泊施設ではなく、ただの豪邸です。しかもオテルはパリっ子のみに許された特権で、パリ以外の街ではどんな豪邸でもオテルは使われません。

そんなレストランを四谷に作った三国清三さんは、世界の三國で、フランスからも勲章をもらっている、三つ星レストランのシェフ以上の凄腕です。三国さんの肩書を並べたら、それだけでこのプログいっぱいになってしまうほどなのですが、私はそこにはあまり関心がなく、三国さん自身が時々口にする、「十五で社会に出ましたから」というところに引っかかります。ぶっちゃけて言うと、中卒です。今の日本社会で中卒を探すのはむずしいですから貴重な存在です。ただ私が貴重というのは数が少ないという意味としてだけで捉えないでください。中卒で職人の世界に入り、中卒でしか身につけられないものを身につけたという意味で、「貴重な」と言ったのです。

実は私は中学の時もう勉強は飽きたから高校へは行かないでコックになると進学指導の先生に言ったことがあります。残念ながら実行できませんでした。その時の先生の言葉は「仲くん、コックには大学を出てからでも成れるのだから、進学しなさい」でした。

 

今はっきり言えるのは、研究者は大学で学ぶことが必要だと思いますが、現実には大学を出てからでは学べないものが山ほどあるということです。ドイツでも何人かの職人さんに、「修行を始めるのが遅いというのは、本当は相当ハンディーなんですがね。致命的ですよ」というのをよく聞きます。全国一斉テスト、こちらの大学入学資格をとってそれから修行開始というパターンが多く、そうなると十九歳です。しかもドイツの社会は馬鹿なシステムを考案してしまったので、大学入学資格をとれば知的に優れていると言うことなので仕事の理解が早いだろうから、三年の修行が二年で済むようにしたのです。義務教育終了だと十五歳で訓練が始められます。この三年が大きいと言うのです。

友人の小学校の教師をしているのが「小学校五年生までのことができていれば社会に出て不自由することはない」と断言していました。バナソニックの創業者、松下幸之助は小学校卒ですから、友人の言葉は確かだと思います。できればそこから職人修行に入れるのが理想かもしれません。

 

三國シェフの作る料理は中世ヨーロッパにいた錬金術師が作る金のようなものです。錬金術師は何もないところから金を作り出すことができる人で、今日の亀の子を組み合わせている化学者ではありません。絵などではよく似た姿で登場しますが、錬金術師は魔法使いといったほうが近いと思います。金を作り出す魔法使いのように、三國シェフは料理を作ります。伝統的なフランス料理を体で覚えた人が編み出す日本人の口にあった料理をなんと呼んだらいいのでしょうか。

三國シェフはコロナで外食が制限された時から動画配信をはじめました。動機は、家庭で簡単にできる料理を配信して、皆さんの役に立ちたいと言うものだそうです。ですから食材はみんなスーパで揃えたものばかりです。

 

もし三国さんが間違って大学にでも行ってそれから料理人の道を歩み始めていたとしたら、このような配信は不可能だったと思います。

もしそうなっていたら、とても知的なセンスのお洒落な料理になっていたでしょう。でも私はそんな料理は食べたくないです。知的な料理は食べたらお腹を壊します。

料理を作るとき知性、知的教養は必要なものも多いかもしれませんかせ邪魔になるものの方が多い厄介者です。もの作りをするとき、どんな物作りも同じです、頭を空っぽにしてインスピレーションを下すには、考えないことなので、知的な人間のように「考えて説明する」のは、料理と、ものづくりそのものと距離を作ってしまい、いいものができません。そんな料理は味気ないと言うより、体に悪いです。それが健康食品を使ったオーガニックのものでも、頭で考えた料理ほど、食べて疲れるもの、見窄らしいものはないのです。

三国さんが中卒で札幌に出て修行を始め、その後東京の帝国ホテルで皿洗いをしながら料理の世界と体ごとで馴染んでいけたことは、私たちにとってもなんと幸せなことだったのでしょう。

 

今日はどんな料理が三國さんのインスピレーションから編み出されるのでしょうか。

ドイツはロックダウンしていますから外食ができないので、日本の方よりもドイツにいる私の方が三国シェフの動画を堪能しているに違いありません。

三國シェフ、有難うございます。

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