ユーモアのあるところとないところと、戦争と平和

2015年9月16日

「ユーモアがあったら。ユーモアのある人が羨ましい」

実生活の中で多くの人の経験していることだと思います。

ユーモアが大事なことは、人間関係に気を配っている人ならみんな知っていて、なくてはならないものとしてユーモアのありがたみを痛感していてます。ユーモアがなかったらギスギスした人間同士の付き合いになってしまうことくらいわかりきっているのです。ユーモアがあってそれで初めて潤っているのです。

人間関係がスムースで滑らかでなかったら油の切れた機械のようなもので、摩擦が生じるためそこから熱が発生して、挙句の果てに機械は壊れてしまいます。

 ユーモアと機械の潤滑油とはよく似ています。でも根本に違うところががあります。

人間同士の付き合いの場合、ユーモアは外から注がれる必要がないからです。みんながユーモアを持っていて、実はそのユーモアは休むことなく働いていていますから、油のように外からさす必要はなく、自分で持っているものを使えばいいということです。ちょっとしか持っていない人もいれば、たくさん持っている人もいるでしょう。でもみんながユーモア持っているです。

もし人間がユーモアを持っていなかったら人間生活は争いごとばかりになってしまうのです。

 

現代は一人一人が意見を持って発言できる個人主義の時代です。それぞれがお互いに言いたい放題を言えるようになりました。

社会のあり方を見ると、昔は権威を持った人がいて、それに従っていれば秩序が保てたのですが、言いたい放題の時代になると、社会はそのまま放っておけばバラバラになって崩壊します。まとめ役は一人一人に任されているのです。みんなが責任を放棄すれば、社会は袋が破れて転がりだした無数のビー玉のようなものです。

 個人主義の誕生、つまり自己主張が認められたとともにユーモアが人間に与えられたと考えてみたいのです。

そもそもユーモアがいつ頃から人間生活に現れてきたのかというと、個人主義が確立してからのことと言っていいと思います。

ユーモアの歴史は個人主義の歴史と並行しているので、個人主義が生まれる以前にユーモアはありませんでした。

つまりユーモアと個人主義は対をなして発展したものなのです。

 

ユーモア、英語ではhumor、という言葉はギリシャ語やラテン語にあります。当時は今日私達が使っているユーモアとは違っていて、液体、体液という意味でした。あるいは、プラズマ、血漿のことで、血が体の中を流れていることという意味で、人間の健康にとって欠かせないものというイメージで捉えればいいと思います。肉体はそれだけでは肉の塊です。血が流れることで生命体としての活動が始まるということです。

人間同士が勝手に意見を言い合っているだけの社会を、意見の塊と見てみましょう。それを生きた社会にまとめる役は誰が担うのかという疑問が出てきます。まとめる力が必要なのですがそれが一体誰なのかという疑問です。

社会が意見の塊と化す個人主義の時代、その役を政治的に見て、民主主義が担っていると考えるのがふつうです。私は少し違う考え方を提示したいと思います。もちろん民主主義の基本に相手の意見を尊重するということが実現していれば、民主主義でいいとは思うのですが、今の民主主義は強いもの勝ちが基本です。大きな声で叫ぶものの意見が通るというパターンです。それでは民主主義という言葉が泣いてしまいます。私はこの民主主義というところ、実はユーモアが働く場所なのではないのかと考えています。個人主義の時代、社会をまとめる役はユーモアが担っているのだと私は考えたいのです。

表面的には古代ギリシャのユーモアと現代のユーモア随分違うように見えますが、今あげた例を見るとどうやら同一のものだと言えそうです。

個人主義には意見の主張が伴います。討論です。時には攻撃的になり、言葉の戦争になってしまいます。そちらに傾いてしまうと大変なことになります。そこでユーモアという、主張とは正反対の、相手を認める能力、相手を理解する能力を持つ必要ができたのです。実生活の中でユーモアを一番感じるのは、自分以外の人を認めようとする寛容さの中にです。

 

人間の成長と人類の歴史はよく似ています。幼児にはユーモアがないのです。このことはよく知られています。ユーモアは個人主義と対をなしているので、個人主義をまだ自分の責任で生きていない幼児は、実はユーモアに気づいていないのです。ユーモアは一人の個人として生きるところから人間のなかで働き始めるといっていいと思います。成人して個人主義を生きるようになればなるほど、ユーモアは必要になって来ます。社会的に見れば、個人主義的な風潮が強まれば強まるほど、自己主張の渦に巻き込まれる前に、ユーモアにもっと働いてもらわなければならないのです。

 

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